ウェビナーで講師を担当するとき、最後まで「いい声」を出し続けたいと思う人は多いでしょう。
しかし、長時間話すことに慣れていない人や、発声トレーニングを受けていない人が、1~2時間のウェビナーでいい声を出し続けるのは難しいこと。最後の方は声がかすれたり、小さくなったりしてしまうでしょう。
それでは、最低1時間だけでもベストな声を維持するには、どうすればいいのでしょうか?
そこで今回は、アナウンサー経験25年の私 白崎あゆみが、安定した声を出す方法を具体的に紹介していきます。
「安定的な声」とは何か?
私がいたテレビ局は、テレビの他にラジオもあります。そのため、ラジオのワイド番組に入ると何時間もしゃべりっぱなし、ということは当たり前でした。
ひたすらしゃべった後は、「よく声が潰れませんでしたね」とスタッフさんに聞かれることも多かったです。私もアナウンサーになる前は、6時間近くの番組で、疲れずに安定して声が出せるアナウンサーを不思議に思っていました。
新人アナウンサーの頃は「大きな声を出すと喉が潰れてしまうかも」と思っていたので、省エネで、小さな小さな声で話そうとしていました。よく技術スタッフの方に「白崎だけ声が小さい」と言われたものです。
本題です。どのようにすれば、長時間、安定的に声が出せるようになるのでしょうか?
「安定的」というのは、「今から1時間、話してください」と言われたときに、最初の1分から最後の50分台まで、ずっと同じ大きさ・スピード・ペースの声を維持できる、ということです。
言い方を変えれば、「自分の出しやすい声」を最初から最後まで保てるということです。
安定的な声を出す第一歩は「腹式呼吸」
「安定的な声」を出せるようになるためには、まず自分にとって無理のない声の出し方を知ることからスタートします。
例えば大きな声を出そうとして喉を締めると、ほぼ必ず喉を痛めてしまいます。喉に必要以上の力が入った状態で声を出すと、そうなるのです。
結論をいえば、無理をしない声とは「腹式呼吸」で出した声です。腹式呼吸で出した声は、喉ではなく声そのものに力が乗ります。
「腹式呼吸ができているかわからない」という方は、あお向けになって、おなかの動きを感じてみてください。あお向けに寝ると、すべての人が腹式呼吸になっているといわれています。
息を吸ったときにおなかが膨らみ、吐いたときにおなかがへこむ、これが腹式呼吸の正解です。この腹式呼吸をふだん意識するだけで、長時間、声を出し続けることができます。
しかしながら、最初は意識していたけれど、話しているうちに腹式呼吸ができているかわからなくなってしまった、という人も多いでしょう。
私も先日、ヨガのレッスンを受けたときに、自分の呼吸が浅いことにびっくりしてしまいました。
その際にヨガの先生もおっしゃっていましたが、腹式呼吸を継続させるには、自分がふだん、どんな呼吸をしているのかを知ることが大切です。
「自分は腹式呼吸が続かないからうまくいかないんだ」と責めるのではなく、どんな呼吸をしているかを知ることが、継続への第一歩になるのです。
そのためには、やはりまずあお向けになって、腹式呼吸の正解を知りましょう。その呼吸のまま、立ったり座ったり、さらには実際に会話もしてみます。
ふだん通り振る舞ったあとは、再びあお向けになって、腹式呼吸が維持できているかチェックしてみましょう。これを日々繰り返せば、腹式呼吸が身につくはずです。
なお、腹式呼吸を続けるには、姿勢にも気をつけましょう。背中が丸まった状態だと腹式呼吸を保ちにくくなります。
腹式呼吸になっていることがわかったら、呼吸に声を乗せてみてください。ただ息を吐くのではなく、「あー」と声にしましょう。
息を吐くときに声帯の振動が加わるだけなので、腹式呼吸はそのまま維持するよう意識しましょう。
このように、腹式呼吸をふだん意識するだけで、長時間、声を安定させられるようになります。現在私はアナウンサー時代以上に、セミナーや研修で長時間話す機会が多いですが、それでも声がまったく衰えないのは、腹式呼吸がベースになっているからでしょう。
ウェビナーで話すのは、対面での会話以上にエネルギーが必要です。そんなとき、腹式呼吸ベースの発声法は、あなたの強い味方になってくれます。
安定した声を出すための「口の開き方」
日本語は、母音(あ・い・う・え・お)の形さえ気をつければ正しい口の開きになります。安定した声を出すためには、「あいうえお」を言うときの口の開き方にも気をつけましょう。
口の開き方について気をつけるべきは、口を「縦」方向に動かすことの意識です。
アナウンサーの私でも、意識していないと口がどんどん横に開いてしまいます。プライベートや講座などで、みなさんの口の開きを拝見していても、横にばかり大きく開いている人をよく見かけます。
「口が正しく開いていないな」と感じたら、とにかく、もっと縦に開く意識を持ちましょう。他、各母音で気をつけておきたい口の開き方について以下にまとめます。
- あ……縦と横の比率が同じくらいになるよう、円を意識して開く
- い……唇を左右対称に引っ張って開く。「へ」の字にならないように注意
- う……キスをするような口で唇を前に突き出す
- え……逆三角形になるように口を開く
- お……小さな円をつくり、唇を前に突き出く
また、口だけでなく、顔全体を動かして話すことも意識してください。すると表情が豊かになり、口も開いてきます。
アナウンサーはニュース原稿を読むだけでなく、レポートなどの情報番組の仕事もあります。情報番組のときは、「表情の変化だけで、いかに感情を伝えられるか」が大事になってくるのです。
例えば料理を食べた後、その一瞬の表情。カメラマンは私の顔をアップで捉えています。そのとき、口だけで感情を表現するのではなく、まぶたのあたり、目と目のあいだ、そして眉毛も意識し、顔全体で話していると思って声を出すようにするのです。
ウェビナーでは身振り手振りが伝わりづらい分、表情で感情を表現するテクニックを身につけておくべきでしょう。
最後に
ウェビナーでは、安定した声を出すだけでなく、話し方・伝え方も重要なポイントですよね。発声法だけでなく、参加者にお話をどう伝えればよいのか、お悩みの方も多いでしょう。
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